「殴る」側、それとも「人間の安全保障」の側

 国民保護法

武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律

(施行、平成16年9月17日)


 第1章 総則
  第1節 通則(第1条―第9条)
  第2節 国民の保護のための措置の実施(第10条―第23条)
  第3節 国民の保護のための措置の実施に係る体制(第24条―第31条)
  第4節 国民の保護に関する基本指針等(第32条―第36条)
  第5節 都道府県国民保護協議会及び市町村国民保護協議会(第37条―第40条)
  第6節 組織の整備、訓練等(第41条―第43条)
 第2章 住民の避難に関する措置
  第1節 警報の発令等(第44条―第51条)
  第2節 避難の指示等(第52条―第60条)
  第3節 避難住民の誘導(第61条―第73条)
 第3章 避難住民等の救援に関する措置
  第1節 救援(第74条―第93条)
  第2節 安否情報の収集等(第94条―第96条)
 第4章 武力攻撃災害への対処に関する措置
  第1節 通則(第97条―第101条)
  第2節 応急措置等(第102条―第125条)
  第3節 被災情報の収集等(第126条―第128条)
 第5章 国民生活の安定に関する措置等
  第1節 国民生活の安定に関する措置(第129条―第133条)
  第2節 生活基盤等の確保に関する措置(第134条―第138条)
  第3節 応急の復旧(第139条・第140条)
 第6章 復旧、備蓄その他の措置(第141条―第158条)
 第7章 財政上の措置等(第159条―第171条)
 第8章 緊急対処事態に対処するための措置(第172条―第183条)
 第9章 雑則(第184条―第187条)
 第10章 罰則(第188条―第194条)
 第11章 事態対処法の1部改正(第195条)
 附則


   第1章 総則

    第1節 通則


(目的)
第1条  この法律は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性にかんがみ、これらの事項に関し、国、地方公共団体等の責務、国民の協力、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置その他の必要な事項を定めることにより、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成15年法律第79号。以下「事態対処法」という。)と相まって、国全体として万全の態勢を整備し、もって武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とする。
(定義)
第2条  この法律において「武力攻撃事態等」、「武力攻撃」、「武力攻撃事態」、「指定行政機関」、「指定地方行政機関」、「指定公共機関」、「対処基本方針」、「対策本部」及び「対策本部長」の意義は、それぞれ事態対処法第1条 、第2条第1号から第6号まで(第3号を除く。)、第9条第1項、第10条第1項及び第11条第1項に規定する当該用語の意義による。
 2  この法律において「指定地方公共機関」とは、都道府県の区域において電気、ガス、輸送、通信、医療その他の公益的事業を営む法人、地方道路公社(地方道路公社法 (昭和45年法律第82号)第1条 の地方道路公社をいう。)その他の公共的施設を管理する法人及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成15年法律第118号)第2条第1項 の地方独立行政法人をいう。)で、あらかじめ当該法人の意見を聴いて当該都道府県の知事が指定するものをいう。
 3  この法律において「国民の保護のための措置」とは、対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関が法律の規定に基づいて実施する事態対処法第22条第1号 に掲げる措置(同号 ヘに掲げる措置にあっては、対処基本方針が廃止された後これらの者が法律の規定に基づいて実施するものを含む。)をいう。
 4  この法律において「武力攻撃災害」とは、武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害をいう。
(国、地方公共団体等の責務)
第3条  国は、国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等に備えて、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織及び機能のすべてを挙げて自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を的確かつ迅速に支援し、並びに国民の保護のための措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。
 2  地方公共団体は、国があらかじめ定める国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針に基づき、武力攻撃事態等においては、自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する責務を有する。
 3  指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等においては、この法律で定めるところにより、その業務について、国民の保護のための措置を実施する責務を有する。
 4  国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。
(国民の協力等)
第4条  国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
 2  前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならない。
 3  国及び地方公共団体は、自主防災組織(災害対策基本法 (昭和36年法律第223号)第5条第2項 の自主防災組織をいう。以下同じ。)及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。
(基本的人権の尊重)
第5条  国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法 の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない。
 2  前項に規定する国民の保護のための措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない。
(国民の権利利益の迅速な救済)
第6条  国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、国民の保護のための措置に係る不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。
(日本赤十字社の自主性の尊重等)
第7条  国及び地方公共団体は、日本赤十字社が実施する国民の保護のための措置については、その特性にかんがみ、その自主性を尊重しなければならない。
 2  国及び地方公共団体は、放送事業者(放送法 (昭和25年法律第132号)第2条第3号の2 の放送事業者その他の放送(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。次条第2項において同じ。)の事業を行う者をいう。以下同じ。)である指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置については、その言論その他表現の自由に特に配慮しなければならない。
(国民に対する情報の提供)
第8条  国及び地方公共団体は、武力攻撃事態等においては、国民の保護のための措置に関し、国民に対し、正確な情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供しなければならない。
 2  国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置に関する情報については、新聞、放送、インターネットその他の適切な方法により、迅速に国民に提供するよう努めなければならない。
(留意事項)
第9条  国民の保護のための措置を実施するに当たっては、高齢者、障害者その他特に配慮を要する者の保護について留意しなければならない。
 2  国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を確保しなければならない。
    第2節 国民の保護のための措置の実施
(国の実施する国民の保護のための措置)
第10条  国は、対処基本方針及び第32条第1項の規定による国民の保護に関する基本指針に基づき、国民の保護のための措置に関し、次に掲げる措置を実施しなければならない。
  1  警報の発令、避難措置の指示その他の住民の避難に関する措置
  2  救援の指示、応援の指示、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置
  3  武力攻撃災害への対処に関する措置に係る指示、生活関連等施設の安全確保に関する措置、危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するための措置、放射性物質等による汚染の拡大を防止するための措置、被災情報の公表その他の武力攻撃災害への対処に関する措置
  4  生活関連物資等の価格の安定等のための措置その他の国民生活の安定に関する措置
  5  武力攻撃災害の復旧に関する措置
 2  指定行政機関の長(当該指定行政機関が合議制の機関である場合にあっては、当該指定行政機関。以下同じ。)及び指定地方行政機関の長は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第33条第1項の規定による指定行政機関の国民の保護に関する計画で定めるところにより、前項各号に掲げる措置のうちその所掌事務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。
(都道府県の実施する国民の保護のための措置)
第11条  都道府県知事は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第34条第1項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該都道府県の区域に係る次に掲げる国民の保護のための措置を実施しなければならない。
  1  住民に対する避難の指示、避難住民の誘導に関する措置、都道府県の区域を越える住民の避難に関する措置その他の住民の避難に関する措置
  2  救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置
  3  武力攻撃災害の防除及び軽減、緊急通報の発令、退避の指示、警戒区域の設定、保健衛生の確保、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置
  4  生活関連物資等の価格の安定等のための措置その他の国民生活の安定に関する措置
  5  武力攻撃災害の復旧に関する措置
 2  都道府県の委員会及び委員は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、前項の都道府県の国民の保護に関する計画で定めるところにより、都道府県知事の所轄の下にその所掌事務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。
 3  都道府県の区域内の公共的団体は、対処基本方針が定められたときは、都道府県の知事その他の執行機関(以下「都道府県知事等」という。)が実施する国民の保護のための措置に協力するよう努めるものとする。
 4  第1項及び第2項の場合において、都道府県知事等は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、その所掌事務に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をすることができる。
(他の都道府県知事等に対する応援の要求)
第12条  都道府県知事等は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、他の都道府県の都道府県知事等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた都道府県知事等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
 2  前項の応援に従事する者は、国民の保護のための措置の実施については、当該応援を求めた都道府県知事等の指揮の下に行動するものとする。この場合において、警察官にあっては、当該応援を求めた都道府県の公安委員会の管理の下にその職権を行うものとする。
(事務の委託の手続の特例)
第13条  都道府県は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の14 及び第252条の15 の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は都道府県知事等の権限に属する事務の1部を他の都道府県に委託して、当該他の都道府県の都道府県知事等にこれを管理し、及び執行させることができる。
(都道府県知事による代行)
第14条  都道府県知事は、武力攻撃災害の発生により市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったときは、当該市町村の長が実施すべき当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置の全部又は1部を当該市町村長に代わって実施しなければならない。
 2  都道府県知事は、前項の規定により市町村長の事務の代行を開始し、又は終了したときは、その旨を公示しなければならない。
 3  第1項の規定による都道府県知事の代行に関し必要な事項は、政令で定める。
(自衛隊の部隊等の派遣の要請)
第15条  都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置(治安の維持に係るものを除く。次項及び第20条において同じ。)を円滑に実施するため必要があると認めるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊法 (昭和29年法律第165号)第8条 の部隊等(以下「自衛隊の部隊等」という。)の派遣を要請することができる。
 2  対策本部長は、前項の規定による要請が行われない場合において、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を円滑に実施するため緊急の必要があると認めるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊の部隊等の派遣を求めることができる。
 3  対策本部長は、前項の規定による求めをしたときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通知するものとする。
(市町村の実施する国民の保護のための措置)
第16条  市町村長は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第35条第1項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該市町村の区域に係る次に掲げる国民の保護のための措置を実施しなければならない。
  1  警報の伝達、避難実施要領の策定、関係機関の調整その他の住民の避難に関する措置
  2  救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置
  3  退避の指示、警戒区域の設定、消防、廃棄物の処理、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置
  4  水の安定的な供給その他の国民生活の安定に関する措置
  5  武力攻撃災害の復旧に関する措置
 2  市町村の委員会及び委員は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、前項の市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、市町村長の所轄の下にその所掌事務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。
 3  市町村の区域内の公共的団体は、対処基本方針が定められたときは、市町村の長その他の執行機関(以下「市町村長等」という。)が実施する国民の保護のための措置に協力するよう努めるものとする。
 4  第1項及び第2項の場合において、市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、その所掌事務に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をすることができる。
 5  第1項及び第2項の場合において、市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、第11条第4項の規定による要請を行うよう求めることができる。
(他の市町村長等に対する応援の要求)
第17条  市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、他の市町村の市町村長等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた市町村長等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
 2  前項の応援に従事する者は、国民の保護のための措置の実施については、当該応援を求めた市町村長等の指揮の下に行動するものとする。
(都道府県知事等に対する応援の要求)
第18条  市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、応援を求めることができる。
 2  第12条第1項後段の規定は、前項の場合について準用する。
(事務の委託の手続の特例)
第19条  市町村は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法第252条の14 及び第252条の15 の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は市町村長等の権限に属する事務の1部を他の地方公共団体に委託して、当該他の地方公共団体の長等(地方公共団体の長その他の執行機関をいう。以下同じ。)にこれを管理し、及び執行させることができる。
(自衛隊の部隊等の派遣の要請の求め等)
第20条  市町村長は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を円滑に実施するため特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第15条第1項の規定による要請を行うよう求めることができる。
 2  市町村長は、前項の規定による求めができないときは、その旨及び当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を円滑に実施するため必要があると認める事項を防衛庁長官に連絡することができる。この場合において、防衛庁長官は、速やかに、その内容を対策本部長に報告しなければならない。
(指定公共機関及び指定地方公共機関の実施する国民の保護のための措置)
第21条  指定公共機関及び指定地方公共機関は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第36条第1項の規定による指定公共機関の国民の保護に関する業務計画又は同条第2項の規定による指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、その業務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。
 2  指定公共機関又は指定地方公共機関は、その業務に係る国民の保護のための措置を実施するため特に必要があると認めるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長に対し、労務、施設、設備又は物資の確保について応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
 3  指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長等は、当該指定行政機関若しくは指定地方行政機関の所掌事務又は当該地方公共団体の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、その業務に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をすることができる。
(安全の確保)
第22条  国は指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置について、都道府県は当該都道府県、市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置について、市町村は当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。
(武力攻撃等の状況等の公表)
第23条  対策本部長は、武力攻撃及び武力攻撃災害の状況並びに住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置その他の国民の保護のための措置の実施の状況について、適時に、かつ、適切な方法により、国民に公表しなければならない。
    第3節 国民の保護のための措置の実施に係る体制
(対策本部の所掌事務等)
第24条  対策本部は、事態対処法第12条第1号 に掲げるもののほか、次に掲げる事務をつかさどる。
  1  指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置の総合的な推進に関すること。
  2  前号に掲げるもののほか、この法律の規定によりその権限に属する事務
 2  対策本部に、対策本部長の定めるところにより対策本部の事務(国民の保護のための措置に関する事務に限る。)の1部を行う組織として、武力攻撃事態等現地対策本部を置くことができる。この場合においては、地方自治法第156条第4項 の規定は、適用しない。
 3  内閣総理大臣は、前項の規定により武力攻撃事態等現地対策本部を置いたときは、これを国会に報告しなければならない。
 4  内閣総理大臣は、第2項の規定により武力攻撃事態等現地対策本部を置いたときは当該武力攻撃事態等現地対策本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間を、当該武力攻撃事態等現地対策本部を廃止したときはその旨を、直ちに、公示しなければならない。
 5  武力攻撃事態等現地対策本部に、武力攻撃事態等現地対策本部長及び武力攻撃事態等現地対策本部員その他の職員を置く。
 6  武力攻撃事態等現地対策本部長は、対策本部長の命を受け、武力攻撃事態等現地対策本部の事務を掌理する。
 7  武力攻撃事態等現地対策本部長及び武力攻撃事態等現地対策本部員その他の職員は、対策副本部長(事態対処法第11条第3項 の対策副本部長をいう。)、対策本部員(同項 の対策本部員をいう。)その他の職員のうちから、対策本部長が指名する者をもって充てる。
(都道府県対策本部及び市町村対策本部を設置すべき地方公共団体の指定)
第25条  内閣総理大臣は、事態対処法第9条第6項 (同条第13項 において準用する場合を含む。)の規定により対処基本方針の案又は対処基本方針の変更の案について閣議の決定を求めるときは、併せて第27条第1項の規定により都道府県国民保護対策本部を設置すべき都道府県及び市町村国民保護対策本部を設置すべき市町村の指定について、閣議の決定を求めなければならない。
 2  内閣総理大臣は、前項の規定により閣議の決定があったときは、総務大臣を経由して、直ちに、その旨を同項の指定を受けた都道府県の知事及び市町村の長に通知するとともに、これを公示しなければならない。
 3  内閣総理大臣は、第1項の指定を解除する必要があると認めるときは、当該指定の解除について、閣議の決定を求めなければならない。
 4  第2項の規定は、前項の指定の解除について準用する。
(指定の要請)
第26条  都道府県知事は、内閣総理大臣に対し、当該都道府県について前条第1項の指定を行うよう要請することができる。
 2  市町村長は、当該市町村の属する都道府県の知事を経由して、内閣総理大臣に対し、当該市町村について前条第1項の指定を行うよう要請することができる。
(都道府県対策本部及び市町村対策本部の設置及び所掌事務)
第27条  第25条第2項の規定による指定の通知を受けた都道府県の知事及び市町村の長は、第34条第1項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画及び第35条第1項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、都道府県国民保護対策本部(以下「都道府県対策本部」という。)及び市町村国民保護対策本部(以下「市町村対策本部」という。)を設置しなければならない。
 2  都道府県対策本部は、当該都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事務をつかさどる。
 3  市町村対策本部は、当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事務をつかさどる。
(都道府県対策本部及び市町村対策本部の組織)
第28条  都道府県対策本部又は市町村対策本部の長は、都道府県国民保護対策本部長(以下「都道府県対策本部長」という。)又は市町村国民保護対策本部長(以下「市町村対策本部長」という。)とし、それぞれ都道府県知事又は市町村長をもって充てる。
 2  都道府県対策本部に本部員を置き、次に掲げる者(道府県知事が設置するものにあっては、第4号に掲げる者を除く。)をもって充てる。
  1  副知事
  2  都道府県教育委員会の教育長
  3  警視総監又は道府県警察本部長
  4  特別区の消防長
  5  前各号に掲げる者のほか、都道府県知事が当該都道府県の職員のうちから任命する者
 3  都道府県対策本部に副本部長を置き、前項の本部員のうちから、都道府県知事が指名する。
 4  市町村対策本部に本部員を置き、次に掲げる者をもって充てる。
  1  助役
  2  市町村教育委員会の教育長
  3  当該市町村の区域を管轄する消防長又はその指名する消防吏員(消防本部を置かない市町村にあっては、消防団長)
  4  前3号に掲げる者のほか、市町村長が当該市町村の職員のうちから任命する者
 5  市町村対策本部に副本部長を置き、前項の本部員のうちから、市町村長が指名する。
 6  都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、必要があると認めるときは、国の職員その他当該都道府県又は市町村の職員以外の者を都道府県対策本部又は市町村対策本部の会議に出席させることができる。
 7  防衛庁長官は、都道府県対策本部長の求めがあった場合において、国民の保護のための措置の実施に関し連絡調整を行う必要があると認めるときは、その指定する職員を都道府県対策本部の会議に出席させるものとする。
 8  都道府県知事又は市町村長は、第34条第1項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画又は第35条第1項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、都道府県対策本部又は市町村対策本部に、国民の保護のための措置の実施を要する地域にあって当該都道府県対策本部又は市町村対策本部の事務の1部を行う組織として、現地対策本部を置くことができる。
(都道府県対策本部長及び市町村対策本部長の権限)
第29条  都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、当該都道府県及び関係市町村並びに関係指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関する総合調整を行うことができる。
 2  前項の場合において、関係市町村長等又は関係指定公共機関若しくは指定地方公共機関は、当該関係市町村又は関係指定公共機関若しくは指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関して都道府県対策本部長が行う総合調整に関し、当該都道府県対策本部長に対して意見を申し出ることができる。
 3  都道府県対策本部長は、国民の保護のための措置の実施に関し、指定行政機関又は指定公共機関と緊密な連絡を図る必要があると認めるときは、当該連絡を要する事項を所管する指定地方行政機関の長(当該指定地方行政機関がないときは、当該指定行政機関の長)又は当該指定公共機関に対し、その指名する職員を派遣するよう求めることができる。
 4  都道府県対策本部長は、特に必要があると認めるときは、対策本部長に対し、指定行政機関及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置に関する総合調整を行うよう要請することができる。この場合において、対策本部長は、必要があると認めるときは、所要の総合調整を行わなければならない。
 5  市町村対策本部長は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関する総合調整を行うことができる。
 6  市町村対策本部長は、特に必要があると認めるときは、都道府県対策本部長に対し、都道府県並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置に関する総合調整を行うよう要請することができる。この場合において、都道府県対策本部長は、必要があると認めるときは、所要の総合調整を行わなければならない。
 7  市町村対策本部長は、特に必要があると認めるときは、都道府県対策本部長に対し、指定行政機関及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置に関する第4項の規定による要請を行うよう求めることができる。
 8  都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、第1項又は第5項の規定による総合調整を行うため必要があると認めるときは、対策本部長又は都道府県対策本部長に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の区域に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な情報の提供を求めることができる。
 9  都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、第1項又は第5項の規定による総合調整を行うため必要があると認めるときは、当該総合調整の関係機関に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の区域に係る国民の保護のための措置の実施の状況について報告又は資料の提出を求めることができる。
 10  都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、都道府県対策本部長にあっては当該都道府県警察及び当該都道府県の教育委員会に対し、市町村対策本部長にあっては当該市町村の教育委員会に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要な限度において、必要な措置を講ずるよう求めることができる。
 11  都道府県知事等又は市町村長等は、都道府県対策本部又は市町村対策本部の設置の有無にかかわらず、この法律で定めるところにより、国民の保護のための措置を実施することができる。
(都道府県対策本部及び市町村対策本部の廃止)
第30条  第25条第4項において準用する同条第2項の規定による指定の解除の通知を受けた都道府県の知事及び市町村の長は、遅滞なく、都道府県対策本部及び市町村対策本部を廃止するものとする。
(条例への委任)
第31条  第27条から前条までに規定するもののほか、都道府県対策本部又は市町村対策本部に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。
    第4節 国民の保護に関する基本指針等
(基本指針)
第32条  政府は、武力攻撃事態等に備えて、国民の保護のための措置の実施に関し、あらかじめ、国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。
 2  基本指針に定める事項は、次のとおりとする。
  1  国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針
  2  次条第1項の規定による指定行政機関の国民の保護に関する計画、第34条第1項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画及び第36条第1項の規定による指定公共機関の国民の保護に関する業務計画の作成並びに国民の保護のための措置の実施に当たって考慮すべき武力攻撃事態の想定に関する事項
  3  国民の保護のための措置に関し国が実施する第10条第1項各号に掲げる措置に関する事項
  4  都道府県対策本部又は市町村対策本部を設置すべき地方公共団体の指定の方針に関する事項
  5  第2号に掲げる国民の保護に関する計画及び国民の保護に関する業務計画を作成する際の基準となるべき事項
  6  国民の保護のための措置の実施に当たっての地方公共団体相互の広域的な連携協力その他の関係機関相互の連携協力の確保に関する事項
  7  前各号に掲げるもののほか、国民の保護のための措置の実施に関し必要な事項
 3  内閣総理大臣は、基本指針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
 4  内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本指針を国会に報告するとともに、その旨を公示しなければならない。
 5  政府は、基本指針を定めるため必要があると認めるときは、地方公共団体の長等、指定公共機関その他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の陳述その他必要な協力を求めることができる。
 6  前3項の規定は、基本指針の変更について準用する。
(指定行政機関の国民の保護に関する計画)
第33条  指定行政機関の長は、基本指針に基づき、第10条第1項各号に掲げる措置のうちその所掌事務に関し、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。
 2  前項の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。
  1  当該指定行政機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項
  2  国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
  3  国民の保護のための措置の実施に関する関係機関との連携に関する事項
  4  前3号に掲げるもののほか、国民の保護のための措置の実施に関し必要な事項
 3  指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画の作成に当たっては、それぞれの指定行政機関の国民の保護に関する計画が1体的かつ有機的に作成されるよう、関係指定行政機関の長の意見を聴かなければならない。
 4  指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。
 5  指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画を作成したときは、速やかに、これを都道府県知事及び所管する指定公共機関に通知するとともに、公表しなければならない。
 6  指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画を作成するため必要があると認めるときは、関係指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の陳述その他必要な協力を求めることができる。
 7  第3項から前項までの規定は、第1項の国民の保護に関する計画の変更について準用する。ただし、第3項及び第4項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。
(都道府県の国民の保護に関する計画)
第34条  都道府県知事は、基本指針に基づき、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。
 2  前項の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。
  1  当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項
  2  都道府県が実施する第11条第1項及び第2項に規定する国民の保護のための措置に関する事項
  3  国民の保護のための措置を実施するための訓練並びに物資及び資材の備蓄に関する事項
  4  次条第1項の規定による市町村の国民の保護に関する計画及び第36条第2項の規定による指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画を作成する際の基準となるべき事項
  5  国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
  6  国民の保護のための措置の実施に関する他の地方公共団体その他の関係機関との連携に関する事項
  7  前各号に掲げるもののほか、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関し都道府県知事が必要と認める事項
 3  都道府県知事は、その国民の保護に関する計画の作成に当たっては、指定行政機関の国民の保護に関する計画及び他の都道府県の国民の保護に関する計画との整合性の確保を図るよう努めなければならない。
 4  都道府県知事は、その国民の保護に関する計画を作成する場合において、他の都道府県と関係がある事項を定めるときは、当該都道府県の知事の意見を聴かなければならない。
 5  都道府県知事は、その国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、総務大臣を経由して内閣総理大臣に協議しなければならない。
 6  都道府県知事は、その国民の保護に関する計画を作成したときは、速やかに、これを議会に報告し、並びに当該都道府県の区域内の市町村の長及び関係指定地方公共機関に通知するとともに、公表しなければならない。
 7  前条第6項の規定は、都道府県知事がその国民の保護に関する計画を作成する場合について準用する。
 8  第3項から前項までの規定は、第1項の国民の保護に関する計画の変更について準用する。ただし、第5項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。
(市町村の国民の保護に関する計画)
第35条  市町村長は、都道府県の国民の保護に関する計画に基づき、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。
 2  前項の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。
  1  当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項
  2  市町村が実施する第16条第1項及び第2項に規定する国民の保護のための措置に関する事項
  3  国民の保護のための措置を実施するための訓練並びに物資及び資材の備蓄に関する事項
  4  国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
  5  国民の保護のための措置の実施に関する他の地方公共団体その他の関係機関との連携に関する事項
  6  前各号に掲げるもののほか、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関し市町村長が必要と認める事項
 3  市町村長は、その国民の保護に関する計画の作成に当たっては、指定行政機関の国民の保護に関する計画、都道府県の国民の保護に関する計画及び他の市町村の国民の保護に関する計画との整合性の確保を図るよう努めなければならない。
 4  市町村長は、その国民の保護に関する計画を作成する場合において、他の市町村と関係がある事項を定めるときは、当該市町村の長の意見を聴かなければならない。
 5  市町村長は、その国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。
 6  市町村長は、その国民の保護に関する計画を作成したときは、速やかに、これを議会に報告するとともに、公表しなければならない。
 7  第33条第6項の規定は、市町村長がその国民の保護に関する計画を作成する場合について準用する。
 8  第3項から前項までの規定は、第1項の国民の保護に関する計画の変更について準用する。ただし、第5項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。
(指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画)
第36条  指定公共機関は、基本指針に基づき、その業務に関し、国民の保護に関する業務計画を作成しなければならない。
 2  指定地方公共機関は、都道府県の国民の保護に関する計画に基づき、その業務に関し、国民の保護に関する業務計画を作成しなければならない。
 3  前2項の国民の保護に関する業務計画に定める事項は、次のとおりとする。
  1  当該指定公共機関又は指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項
  2  国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
  3  国民の保護のための措置の実施に関する関係機関との連携に関する事項
  4  前3号に掲げるもののほか、国民の保護のための措置の実施に関し必要な事項
 4  指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれその国民の保護に関する業務計画を作成したときは、速やかに、指定公共機関にあっては当該指定公共機関を所管する指定行政機関の長を経由して内閣総理大臣に、指定地方公共機関にあっては当該指定地方公共機関を指定した都道府県知事に報告しなければならない。この場合において、内閣総理大臣又は都道府県知事は、当該指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、必要な助言をすることができる。
 5  指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれその国民の保護に関する業務計画を作成したときは、速やかに、これを関係都道府県知事及び関係市町村長に通知するとともに、公表しなければならない。
 6  第33条第6項の規定は、指定公共機関及び指定地方公共機関がそれぞれその国民の保護に関する業務計画を作成する場合について準用する。
 7  前3項の規定は、第1項及び第2項の国民の保護に関する業務計画の変更について準用する。ただし、第4項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。
    第5節 都道府県国民保護協議会及び市町村国民保護協議会
(都道府県協議会の設置及び所掌事務)
第37条  都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、当該都道府県の国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するため、都道府県に、都道府県国民保護協議会(以下この条及び次条において「都道府県協議会」という。)を置く。
 2  都道府県協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
  1  都道府県知事の諮問に応じて当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関する重要事項を審議すること。
  2  前号の重要事項に関し、都道府県知事に意見を述べること。
 3  都道府県知事は、第34条第1項又は第8項の規定により国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、あらかじめ、都道府県協議会に諮問しなければならない。ただし、同項の政令で定める軽微な変更については、この限りでない。
 4  第33条第6項の規定は、都道府県協議会がその所掌事務を実施する場合について準用する。
(都道府県協議会の組織)
第38条  都道府県協議会は、会長及び委員をもって組織する。
 2  会長は、都道府県知事をもって充てる。
 3  会長は、会務を総理する。
 4  委員は、次に掲げる者のうちから、都道府県知事が任命する。
  1  当該都道府県の区域の全部又は1部を管轄する指定地方行政機関の長又はその指名する職員
  2  防衛庁長官が指定する陸上自衛隊に所属する者、海上自衛隊に所属する者及び航空自衛隊に所属する者
  3  当該都道府県の副知事
  4  当該都道府県の教育委員会の教育長、警視総監又は当該道府県の道府県警察本部長及び特別区の消防長
  5  当該都道府県の職員(前2号に掲げる者を除く。)
  6  当該都道府県の区域内の市町村の長及び当該都道府県の区域を管轄する消防長
  7  当該都道府県の区域において業務を行う指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員
  8  国民の保護のための措置に関し知識又は経験を有する者
 5  委員の任期は、2年とし、再任することを妨げない。委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 6  都道府県協議会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
 7  専門委員は、関係指定地方行政機関の職員、当該都道府県の職員、当該都道府県の区域内の市町村の職員、関係指定公共機関又は指定地方公共機関の職員及び国民の保護のための措置に関し専門的な知識又は経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。
 8  前各項に定めるもののほか、都道府県協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。
(市町村協議会の設置及び所掌事務)
第39条  市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、当該市町村の国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するため、市町村に、市町村国民保護協議会(以下この条及び次条において「市町村協議会」という。)を置く。
 2  市町村協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
  1  市町村長の諮問に応じて当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関する重要事項を審議すること。
  2  前号の重要事項に関し、市町村長に意見を述べること。
 3  市町村長は、第35条第1項又は第8項の規定により国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、あらかじめ、市町村協議会に諮問しなければならない。ただし、同項の政令で定める軽微な変更については、この限りでない。
 4  第33条第6項の規定は、市町村協議会がその所掌事務を実施する場合について準用する。
(市町村協議会の組織)
第40条  市町村協議会は、会長及び委員をもって組織する。
 2  会長は、市町村長をもって充てる。
 3  会長は、会務を総理する。
 4  委員は、次に掲げる者のうちから、市町村長が任命する。
  1  当該市町村の区域を管轄する指定地方行政機関の職員
  2  自衛隊に所属する者(任命に当たって防衛庁長官の同意を得た者に限る。)
  3  当該市町村の属する都道府県の職員
  4  当該市町村の助役
  5  当該市町村の教育委員会の教育長及び当該市町村の区域を管轄する消防長又はその指名する消防吏員(消防本部を置かない市町村にあっては、消防団長)
  6  当該市町村の職員(前2号に掲げる者を除く。)
  7  当該市町村の区域において業務を行う指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員
  8  国民の保護のための措置に関し知識又は経験を有する者
 5  第38条第5項の規定は、前項の委員について準用する。
 6  市町村協議会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
 7  第38条第7項の規定は、前項の専門委員について準用する。この場合において、同条第7項中「当該都道府県の職員」とあるのは「当該市町村の属する都道府県の職員」と、「当該都道府県の区域内の市町村の職員」とあるのは「当該市町村の職員」と、「都道府県知事」とあるのは「市町村長」と読み替えるものとする。
 8  前各項に定めるもののほか、市町村協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、市町村の条例で定める。
    第6節 組織の整備、訓練等
(組織の整備)
第41条  指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関(以下「指定行政機関の長等」という。)は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備するとともに、国民の保護のための措置に関する事務又は業務に従事する職員の配置及び服務の基準を定めなければならない。
(訓練)
第42条  指定行政機関の長等は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、それぞれ又は他の指定行政機関の長等と共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならない。この場合においては、災害対策基本法第48条第1項 の防災訓練との有機的な連携が図られるよう配慮するものとする。
 2  都道府県公安委員会は、前項の訓練の効果的な実施を図るため特に必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該訓練の実施に必要な限度で、区域又は道路の区間を指定して、歩行者又は車両の道路における通行を禁止し、又は制限することができる。
 3  地方公共団体の長は、住民の避難に関する訓練を行うときは、当該地方公共団体の住民に対し、当該訓練への参加について協力を要請することができる。
(啓発)
第43条  政府は、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するために実施する措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めなければならない。


コメント
 2004年6月(第159回国会)において、その前年成立した有事関連3法(法11)を実効化するために国民保護法等有事関連7法が成立した。それらは、?@国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)、?A米軍行動関連措置法(武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律)、?B特定公共施設利用法(武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律)、?C自衛隊法の1部を改正する法律、?D海上輸送規制法(武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律)、?E国際人道法違反処罰法(国際人道法の重大な違反に関する法律)、?F捕虜取扱い法(武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律)である。
?Aは武力攻撃事態等における米軍の行動に自衛隊に準じる自由を保障した法律、?B港湾施設、飛行場、道路、海域、空域及び電波の利用に関して、それらの利用の指針を定め、優先利用・実施を確保するための法律、?Cアメリカ軍の後方支援、物品や役務の相互提供に関する日米間の協定(ACSA)を実施するため、自衛隊の側からその根拠法である自衛隊法を改正した法律、?Dは防衛出動を命じられた海上自衛隊による「臨検」と「審判」の手続を定めた法律、?Eジュネーブ諸条約第1追加議定書の実施のための法律、?Fはジュネーブ第3条約その他を実施するための法律。いずれも重要な内容を有しているが、ここでは?A国民保護法を抄録する。
国民保護法は、武力攻撃から国民の生命、身体、財産を保護するための法律といわれているが、そのためには政府による国民生活の規制が必至となる。それは裏返せば、緊急事態を理由とする国民総動員法制であり、国民の権利を大幅に制限・禁止する法制とならざるを得ない。これが実際に機能するとなれば、それは?などと相まって、日本国憲法の平和主義(第9条)に反する事態を引き起こすだけでなく、憲法の人権と民主主義を停止しかねない結果をもたらす危険性がある。国民保護法は195か条と附則から成る大部の法律である。ここでは目次を掲載して、第1章総則を抄録するにとどめる。

参考文献
 大石利雄「国民保護法等有事関連7法」ジュリスト1274号『特集・第159回国会主要成立法律』41頁、本多滝夫「『有事法制』と『国民保護法案』」法律時報76巻7号57頁



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