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コラム

更新日:2008.10.9

ベーシック・インカム

働くことのコペルニクス的転回

「ベーシック・インカム」という構想をご存じでしょうか。「無条件で全員に対して個人単位で交付される所得であって、交付にあたっては資力調査や就労要件がない」(p.20)というもので、雇用形態の多様化や社会保障制度のゆらぎのなかで、いま注目されつつある考え方です。
「働かざる者食うべからず」を信条としている人にとっては、働かずに遊んでいる怠け者に対してもお金を支給するということに大きな抵抗を感じるでしょう。また、財政危機のなか、いったいどこにそんな財源があるんだという声も聞こえてきそうです。さらには本当に必要な人にお金を支給するのはいいとして、なぜ金持ちにまで一律に与えるのかという疑問の声もあがりそうです。
このたび刊行しました『シティズンシップとベーシック・インカムの可能性』(シリーズ・新しい社会政策の課題と挑戦第3巻)では、そもそもどういった社会を築くべきで、その実現のためにどのような政策をとるのかという原理的な思考のなかで「ベーシック・インカム」を考察し、この考え方に接したときに当然おこるであろう疑問にも答えながら、その実現可能性までを具体的に検討しています。また、ベーシック・インカムと対立的な構想である「ワークフェア(雇用志向社会政策)」との関連がわかる2003年に行われた座談会(司会:武川正吾 対談者:宮本太郎・小沢修司)とそれをふまえた書き下ろし原稿(宮本・小沢)も掲載し、労働と生存に対する考え方の根本的な捉え直しを迫ります。
ベーシック・インカムをめぐる議論はまだ始まったばかりですが、働くことと生きることを考えるうえで大きな発想の転換ともいえるこの構想からは今後も目が離せません。

【好評既刊】
シリーズ・新しい社会政策の課題と挑戦
第1巻 福原宏幸編著『社会的排除/包摂と社会政策
第2巻 埋橋孝文編著『ワークフェア――排除から包摂へ?
【ベーシック・インカム関連書籍】
ゲッツ・W.ヴェルナー/渡辺一男訳『ベーシック・インカム――基本所得のある社会へ』(現代書館、2007年)
トニー・フィッツパトリック/武川正吾・菊地英明訳『自由と保障――ベーシック・インカム論争』(勁草書房、2005年)
小沢修司著『福祉社会と社会保障改革――ベーシック・インカム構想の新地平』(高菅出版、2002年)

シティズンシップとベーシック・インカムの可能性

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