• TOP 
  • > コラム 

コラム

更新日:2008.5.26

年金制度改革に求められている多角的な視座とは

2008年5月19日に、政府の<社会保障国民会議>は、基礎年金の全額税方式移行に伴う試算を公表しました。
現時点の日本における年金改革議論は、主には財政の長期的な安定性の観点から、税方式か社会保険方式かの是非を中心に、制度のメリット・デメリットについて議論されています。
ところで、年金制度は、各国とも少子高齢社会の到来を迎え、大きく変貌を遂げてきました。グローバル化の深化のもとで進行する経済の不安定化や人口変動への対応も踏まえ、単に税方式か社会保険方式かの是非だけでなく、どのような国家・社会をつくるのかにかかわる大きな政治課題として国民的議論を経て、改革を進めてきました。

さて、『変貌する世界と日本の年金』は、これからの日本の年金制度改革を考える上で多くの論拠と視座を与えてくれます。本書は3部構成をとっています。
第I部は、年金とはそもそもどのような理念のもとで制度が構築されているのか。また複雑だと言われる年金のしくみをわかりやすく概説もしています。さらには、公的年金がなぜ必要なのかについてあらためて基本原理に立ち返ってひもといていきます。
第II部は、各国が、少子高齢社会を迎えるにあたって、適時、国民的議論を経て変貌を遂げてきた経緯を追っています。改革に伴う争点・論点と改革手法について詳細に検証しています。
第III部は、各国の改革を踏まえ、いま日本が抱えている課題がどのようなものかについて提起しています。特に第2章の「社会保険料と租税に関する考察」では、その相違を原理的に考察することから、社会保障制度改革の問題点などを提示し、新たな制度構築への提言を行っています。
その他、各章にて、適宜、生活保護や後期高齢者医療制度など関連する現行の社会保障制度の課題についても言及しています。
比較研究を踏まえ、多角的に現行制度を問い直す本書は、年金制度改革、さらには社会保障制度改革にあたって多くの示唆を与えることでしょう。分野を超えて幅広い層の読者の方々へご一読をお薦めします。


変貌する世界と日本の年金

<前のコラム | 次のコラム> | バックナンバー
 

本を探す

書籍キーワード検索

詳細検索

書籍ジャンル検索