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更新日:2014.04.01
「平和」というテーマのひろがり
日本平和学会40周年を記念して平和関係の本をインター・ディプリナリーに編んだ『平和を考えるための100冊+α』は、バラエティに富んでいて、また1つ1つが短くまとめられていて読みやすい。
「平和」を1つの定義から演繹するのではなく、複数の認識からとらえる複眼的観点も、脱イデオロギー化された今日という時代性を感じさせる。
「平和」と言えば、まずは「暴力」との関係。…暴力の根源。
暴力の根源は、人の根源的暴力性や権力支配性にあるというだけでなく、「構造」そのものであるとするガルトゥング『構造的暴力と平和』から本書ははじまる。
また、ウォルツァー、イリッチ、ポラニー、ホフマン、モーゲンソー、ポッゲなど、意外な思想家の書も紹介されている。
イデアリストだけでなくリアリストの本もいくつか紹介されていて、「平和」への多様なアプローチに、バランス感覚を感じる。
さらに、インターバルのコラムも短いながら、深い考察をしているものが多い。
欲を言えば、西谷修『夜の鼓動にふれる』やクラウゼヴィッツ『戦争論』(コラムに一部は紹介)なども入っていればと思ったが、これらは、「平和論」ではなく、むしろ、その裏返しの「戦争論」として括るべき領域なのかもしれない。
1つ1つ少しずつ読めて、1つずつ考えるにはちょうどいい本である。
「平和」「戦争」「暴力」の時代性・現代性を考えるうえでお勧めの本である。
【秋山】
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