- TOP
- > コラム
環境保護への最善策を多角的に考える
今年7月、北海道洞爺湖で行われたサミットで、地球温暖化問題が主要議題となり、G8プラス主要排出国による国際的な気候変動対策の将来枠組みについて議論されたことは、まだ記憶にあたらしいでしょう。
いまや環境問題がマスメディアや身近な話題として取り上げられない日はないと言っていいかもしれません。特に「地球温暖化」は、企業の努力や政府の規制などにより、環境問題として人々に認識されるようになりました。夏場のクール・ビズの実践、省エネ対策、マイバック運動などの取り組みも広がりを見せています。“Co2の増加→地球温暖化→環境悪化”という図式のもとで、とにかくCo2を減らし、温暖化対策に貢献したいと思って取り組んでいる人も多いはずです。
しかし、環境問題は地球温暖化だけではありません。もっと別の側面からも環境保護のあり方を考える必要があるのではないでしょうか。Co2の削減は大事かもしれませんが、「国家予算を投じて何が何でも」という姿勢には少し疑問もあります。お金をかければ削減が可能となり、温暖化がストップするのかを疑ってみる必要はあると思います。あわせて、そもそもCo2が増加することにたよった産業構造や生活スタイルも見直すなどの別の方策も検討されるべきでしょう。
ひとつ問題を解決しても、関連するほかの問題を無視することになってしまったり、あるいは、さらに大きな問題を引き起こしてしまうかもしれません。地球環境のような複雑な問題ではこのようなことが十分起こりうるでしょうから、慎重にかつ様々な視点から総合的に検討が進められるべきだと思います。
『地球環境の政治経済学―グリーンワールドへの道』では、市場自由主義者、制度主義者、生物環境主義者、ソーシャル・グリーン主義者という主要な立場から、それぞれが提唱する環境問題の捉え方やアプローチを整理し、諸問題への対応を比較分析しています。様々なコストを抜きにしては語れない環境問題について、政治経済学の視点から迫ることにより、実現可能かつ最善の手だてを模索するための視角と素材を提供しています。たしかに「これらのうち、どのアプローチが(あるいは、どれとどれの組み合わせが)環境保全にとって最善なのか」までは、はっきりと述べられているわけではありません。その判断は、読者にゆだねられているのです。
世界各地で起こっている環境の「変化」は、何が原因で起こっているのでしょうか。また対策を進めているにもかかわらず未だに「悪化」に向かっているのでしょうか。現状と原因をきちんと把握した上で、解決策を考えることが求められています。環境によいと思って続けていた取り組みが、効果がないばかりか、別の側面で悪影響をあたえていたということが起きないようにしたいものです。
本書を通じて、マスメディアから発信されるものとはまた少し違った環境問題の捉え方に触れてみませんか。
<前のコラム | 次のコラム> | バックナンバー