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裁判員が知っておきたい基礎知識って?
来年5月21日にスタートする裁判員制度。しかし,この裁判員制度,一般市民のみなさんにはあまり歓迎されていないようです。
たしかに,裁判員に選ばれると,そのために仕事を休まなくてはならなかったり,罰則付きの守秘義務が課されるなど,裁判員への負担が決して少なくないことが理由としてあるでしょう。ただ,参加に消極的な理由としては,最高裁の世論調査結果でも示されているように,「被告人の運命が決まるので,責任重大」とあわせて,「素人の自分が,人を裁くなんて・・・」という不安がやはり大きいようです。
裁判員制度は,英米で行われている「陪審制度」とは違い,裁判員は,犯罪事実の証明について判断するだけでなく,その犯罪事実がどのような犯罪になるかという法律の適用と,どの程度の刑を科すかという量刑についても判断しなければなりません。これが,裁判員への大きな心理的負担となるのでしょう。
いま,裁判員となる市民の一番の関心事は,「どうしたら裁判員にならないですむか」ということかもしれません。制度に対する疑問や質問は数多く,それに対応した制度解説の書籍もたくさん出版されています。しかし,本当に必要なのは,制度の詳しい情報・解説ではなく,よくわからない刑事裁判についての基本的な知識ではないでしょうか。
『裁判員のための刑事法ガイド』は,未来の裁判員のみなさんに,ただ制度を知ってもらうだけでなく,これをきっかけに「刑事裁判のしくみや刑事法の基礎知識を身につけてもらおう」ということで企画されました。そのため,裁判員制度の解説だけでなく,むしろ刑事裁判の手続や原則,事実認定を行う場合に必要となる刑法の基礎理論に重点を置いています。具体的な事件例にそって,裁判員が関わる前後の手続についても解説し,また,刑法の基礎理論,各犯罪類型についてもわかりやすく説明しています。いわゆる裁判員制度の解説本ではなく,刑事法についての知識をもたない人たちへ向けた,“刑事法ガイド”として誕生した本書は,法学部学生の学習にもきっと役立つことでしょう。著者いわく,「大学生のみならず,高校生や中学生の法教育のための教材ということも意識し,よりやさしい叙述を心がけた」とのこと。“裁判員のための”としていますが,裁判員になる人だけではなく,広く一般の人に読んでいただきたい一冊です。
裁判員制度には,早くから多くの批判が寄せられていました。しかし,異論がありながらも実施されると決まった今,ただ単に弊害を指摘・批判するだけでなく,その問題点をどうやって克服してゆくかを考え,より良い制度にしていくことが大切です。制度自体を充実させることはもちろんのことですが,やはり裁判員制度成功のカギを握るのは,一般市民のみなさんです。
少し肩の力を抜いて,これから自分が担うことになるかもしれない刑事裁判に向き合ってみませんか。
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