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福祉国家の「市場化」のなかでNPOをどう位置づけるべきか!
いまや「NPO」は、社会に無くてはならないものになった(それだけの影響力をもってきた)と言っても過言ではありません。
NPOは、1995年の阪神淡路大震災でのボランティア活動などでその存在が注目され、それを背景に1998年にはNPO法が制定・施行されました。
それから10年、日本におけるNPO法人の数は、約3万5000を超えるまで増え、NPOセクターと呼びうるような実体が成立したと言えます。
『NPOは公共サービスを担えるか』の著者・後房雄氏は、名古屋大学で、「行政学」や「NPO論」を講義するだけでなく、名古屋で「市民フォーラム21・NPOセンター」というNPO支援組織の代表理事として、実際にNPO支援活動を10年以上行っている実践家でもあります。
そこでの経験やイギリスでの調査などを踏まえて、著者は、NPO法施行からこんにちまでの10年を、あえて「NPO啓蒙期」と呼びます。それは、NPO論の大家であるレスター・サラモンも指摘するように、NPOは、アマチュアリズムと心地よい慈善活動から脱却(ボランタリズムの神話から脱却)して、社会の中心問題に取り組んで成果をあげる団体になるべき時期に来ている、という著者の問題意識から来ています。
さらにその問題意識の根底には、福祉国家の「市場化」の流れのなかで(新自由主義的な「官から民へ」改革のなかで)、地方分権化改革のなかで、NPOをどう位置づけるべきかという問題意識も伏在しています。
そして、それに応えるべく、本書で、「次の10年に向けた課題と戦略」を提言しています。
その代表的なものが、イギリスのサードセクター経営者協会(ACEVO:アキーヴォ)をモデルとした日本サードセクター経営者協会(仮称JACEVO:ジャキーヴォ)の設立構想とその準備作業です。
日本のNPOセクター(サードセクター)が実力をつけるとともに、「第三者政府」としての仕組みの設計やルールに関して政府・行政に対して正面から提言活動を展開していくという構想です。
本書は、NPO関係者が共通に抱えている問題点を鋭く分析し、課題提起をしています。その意味で、きっとNPO関係者の必読書となるでしょう。
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