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コラム

更新日:2008.4.25

刑事政策学のゆくえ

いま刑事司法が大きくかわろうとしています。もっぱら人々の関心は、来年5月21日にスタートすることが決まった裁判員裁判に集中しているようです。しかし、実は裁判員制度以外にも、さまざまな刑事関連法が近年相次いで改正されており、「裁判」の場面のみならず、刑事司法全体にわたって変革の時を迎えています。
刑法、少年法では、罰則の強化や刑事処罰年齢の引き上げなど、いわゆる重罰化改正が行われました。また、受刑者の処遇等を規定した監獄法は、1908(明治41)年の制定から約100年を経て、「刑事収容施設および被収容者等の処遇に関する法律」として生まれ変わりました。さらに昨年5月には、運営の大半を民間企業が担当する、日本初の「民営刑務所」が山口県美祢市に新設され、運用が始まっています。こうした新たな動向もふまえて、犯罪の防止・対策と犯罪者の改善矯正をめぐる刑事政策の分野では、そのあり方について様々な課題が指摘されつづけています。

刑事政策学の体系』 は、この刑事政策学の分野で長年にわたり活躍してこられた前野育三先生の古稀をお祝いして刊行されたものです。本書は、記念論文集にありがちな自由論題論文を集めたものではなく、「犯罪者の処遇と人権」・「少年刑事政策」・「現代社会と犯罪」の三部構成のもと、体系的論文集として編まれました。刑事政策の重要なテーマをほぼ網羅し、前野先生の幅広い研究領域を反映するものとなっています。そして、本書に寄せられた26論文のいずれもが、現代の刑事政策学の現状と諸課題に取り組もうとしています。

市民が裁く側の当事者となる裁判員制度導入を控えて、犯罪事件、刑事裁判への関心はますます高まっていくことでしょう。ただ、その一方で、社会の多くの人は、犯人が逮捕されて有罪判決を受けたあとのことについては、概して無関心です。しかし、刑事手続は、有罪・無罪の確定で終わるわけではありません。「塀の中」の出来事、そして未決拘禁者や受刑者の権利についても目を向けることが必要ではないでしょうか。


 

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