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物価上昇から考える社会のあり方
とどまるところを知らない原油価格の高騰に加え、小麦やバターなど身近な食料品の値上がりが国民の生活を直撃しています。物価上昇の一方で給料は上がらず(あるいは賃下げ)、財布の紐はますます固くなるばかりです。
今から30数年前にも「狂乱物価」と呼ばれる急激な物価上昇がありました。『少子高齢化と社会政策』の第7章(227頁)によると1973年に「輸入大豆の値上がりから加工品や調味料への波及および繊維原料の値上がりによる繊維製品への波及など食品と被服を中心とした消費者物価が上昇」し、オイルショックを経て「1974年の消費者物価は総合で23-26%の高い上昇率」を記録しました。翻って、現在の消費者物価指数(08年5月)をみてみると対前年比上昇率は1.5%で、当時と比べると低い水準のようにみえます。とはいうものの、日銀の生活意識調査(08年6月)によると物価上昇率の実感が10.2%に達しており、国民は実態以上に「物価が上がった」と感じているという結果となっています。一方で、少子高齢化による社会保障費の増大を理由に消費税を数年後には増税する必要があることも議論されるなど、生活するうえで明るい将来展望をますます描きにくくなっているというのが現状です。
『少子高齢化と社会政策(社会政策II)』は、年金、医療、介護、公的扶助など生活に密接にかかわる社会保障の分野に焦点をあて、その歴史と経過を検証し、危機的状況を打開する針路を描き出す社会政策の基本書です。これまでの長い歩みをたどることで、現行制度を分析するだけではみえてこない包括的な視点でいまの社会状況を照らし出すことができます。また、同シリーズの〈社会政策I〉『ワーク・ライフ・バランスと社会政策』は8月の新刊となります。こちらもあわせてご覧ください。
原油や小麦価格の高騰が、環境にやさしい「低炭素社会」への模索や地元の産品を見直すなど思わぬ効果をもたらしている面もあるようです。成熟段階に入ったといわれる日本のこれからのあり方を考えるいい機会なのかもしれません。
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