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相思相愛の「就活」術
「十人十色」という言葉があります。説明するまでもなく、人にはそれぞれ考え方や好みに違いがあるということ、を意味しています。みな他者の存在によって自分という人間を認識することができるという立場にたてば、どのような他者と出会うかによってその役割はおのずと決まってくるものと考えられます。
ここで、日々、私たちが生活する職場に目を移してみましょう。バリバリ働く人、相談にのってくれる人、雰囲気をなごませてくれる人…… 収益を上げることを目的とする営利企業においては、バリバリ働く人がいればそれでいいという考え方もあるかもしれません。しかし、実際にはそのようにうまくは話が進まないのがもどかしいところであり、おもしろいところなのでしょう。
一見、ムダに見えたとしても、目線をすこし遠くにやれば、大きな利益を生みだすことがあります。各々のキャラクターや今いる人材との相性を見極めてバランスよく人員を配置するという前提のもと、目先の利益だけに惑わされず、さらに先を見据えて考えることは、どのような組織にとっても必要なことでしょう。
近年、「就活」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。個性的でありたいと叫んでいた青年たちもリクルートスーツに身をつつみ、企業まわりに勤しみます。ですが、いくら外見をマニュアルどおりにとりつくろっても、需要と供給があわなければご縁がなかったということになります。求職者は、企業側の意向に沿う人材でなければなりません。
キャリアカウンセラーの小島貴子さんは、内定を勝ちとるのは、「面接官を納得・安心・共感させた人」だと指摘します。そのためには、相手をよく知ることはもちろんのこと、自分自身のことを知る努力をしなければならないでしょう。しかしながら、自分を知るということは何よりもむずかしいことです。周りにいる誰かから承認されるという過程なくしては知りえないことのようにも思います。「自分のやりたいこと」と「自分にできること」とを勘案して、「自分を求めている企業」で働くということがお互いにとって幸せなことです。「就活」で挫折する若者たちは、そのあたりを見誤っていたのかもしれません。
『キャリアカウンセラーのためのジョブクラブマニュアル――職業カウンセリングへの行動主義的アプローチ』は、科学的なエビデンス〔証拠〕に裏づけられた「承認」がとりいれられた「ジョブクラブ」の方法が紹介されています。この本の原著は、かつて経済不況下にあったアメリカで出版されたものですが、その方法論は、現在同じように不況にあえぐ日本にも有効に機能するものだと確信しています。就職支援にかかわる人はもちろん、外見だけのマニュアル本にだまされない「就活」をしたいあなたにもおすすめの1冊です。
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