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『18歳からはじめる憲法』編集雑感
2008年5月、神戸学院大学でおこなわれた全国憲法研究会のあと、神戸市内の某ホテル会議室での編集会議。その年の4月に入社したばかりの私は、上司に連れられてその席に着きました。学生としてではなく編集者として研究者の先生にお会いするのははじめてのことで不安でいっぱいだったことを今でも鮮明に覚えています。しかも、お会いするのは刑事法学・社会学を勉強してきた私でも存じあげている憲法学者の水島朝穂先生。いやおうなしに緊張は増していきます。
「超」のつくほど多忙な水島先生。すこし遅れて会議室に入って来られたのですが、一歩足を踏み入れた瞬間から「水島節全快!」といったかんじで… 終始圧倒されながらも、軽快な語り口にひきこまれ、アッという間に水島ファンのひとりになりました。その日は、本書の下地となった連載原稿等をもとに、私から用語説明や資料部分にどのようなものを掲載したら18歳を想定する読者により理解してもらいやすいかということを提案し、水島先生、さらには同席していただいたお弟子さんの藤井康博さんに応えていただきながら上司のリードのもとで会議を進めていきました。
その後も、学会のさい、さらには早稲田大学の先生の研究室をたずねて本書掲載用の写真を撮り、打ち合わせを重ね、このたび、ついに<18歳から>シリーズの第1号として刊行されることになったのです。本書は、「現場へのこだわり」「何のための憲法か」「原点からものをみる」という3つの視点をとおして、抽象的な憲法の世界を水島先生独特のリズミカルな論調でわかりやすく解説しています。現場や先生自らが収集されたグッズなどの写真にくわえ、最新のデータを整理した図表を用いながらの説明は読者の想像力をかきたててくれることでしょう。さらに、2・4・6頁のテーマごとの読みきりスタイルは、端的にポイントをおさえるのにうってつけです。
水島先生から「編集者とはなにか」ということを含めて多くのことを教えていただいた私にとって、たいへん思い入れのある1冊となりました。本書には、「憲法を好きになってほしいとまではいかないまでも、決して嫌いにさせない」という著者(と私たち編集者)の想いがつまっています。編集者として本書とともに3年目をむかえ、すでに十数冊の著作の誕生に立ちあわせていただいた私が自信をもってみなさまにお届けする『18歳からはじめる憲法』をぜひご拝読ください。
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