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コラム

更新日:2013.2.26

政治思想(史)は「干物(ひもの)」の学問か?

 今や超売れっ子の仲正昌樹先生ですが、先生は自虐的アイロニストだと思われます。そしてブラックユーモアの持ち主でもあります。編者「あとがき」を読んでもらえばそれがわかるはずです。
しかし、本書『政治思想の知恵 マキャベリからサンデルまで』は、アイロニカルではなく正統派の政治思想史の入門書です。序章の仲正先生の文章を読んでもらえばわかると思います。それは本来、仲正先生が生真面目な学者肌のひとだからでしょう。アイロニストとして振舞うのは根がシャイなのではないか、そう思います。
さて、最近の政治思想家・社会思想家をとりあげたアンソロジーは、得てしてすぐにその思想家の「アクチュアリティ」云々…へと走る傾向があります。それはそれでよいのですが、肝心なその思想家の本来の姿や思想の要諦がよくわからないままに本を読み終えることがあっては困ります。
本書は、そんなアクチュアリティの迷路に迷い込まず、もっぱら、まずは押さえておかねばならない14名の(西欧)近現代を代表する政治思想家の思想のエッセンスを、テクストクリティーク(原著作の批判的・批評的読解)をふまえて、丁寧にとりあげています。とりあげる中味の性質上やさしいとまではいえませんが、決して難しくなく解説しています。
ところで、政治思想(史)は、いまや「干物(ひもの)」の学問と呼ばれているそうです。それからすると、公共政策学あたりが、旬な「生もの」の学問なのかもしれません。
アイロニカルな言い方をすると、「干物」は噛めば噛むほど味が出てしかも滋味深い。それに比べ「生もの」は、早く腐るし、食あたりするかもしれない。その点に気をつけなければならないということでしょうか。
そう、政治思想(史)は干物でいいのです。その干物という食材のなかから人生の様々な知恵を学ぼうではありませんか。
そして本書には、オマケに、各章と帯に14名の思想家のオリジナル・イラストとウイットに富んだセリフ(吹き出し)も付いています。
また、帯に付いた人とセリフを結ぶクイズも楽しめます。
干物らしく何度でも美味しい本です。

(秋山) 
政治思想の知恵

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