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コラム

更新日:2011.12.12

無戦世界を築くために

普天間基地移設問題が取りざたされたのは、鳩山政権のときでした。鳩山元首相は、2009年に民主党代表として「最低でも県外」と宣言したのですが、2010年5月には、県外移設を断念せざるをえなくなり、内閣を総辞職するにいたりました。
沖縄は、太平洋戦争終結のために「捨て石」にされ、戦後はアメリカ基地の統治下におかれ、復帰後も「基地の島」となり、時々の政争の具とされ、つねに「戦争」とともに歩んできました。
なぜ、いまだに意図的で積極的な「沖縄戦」の捏造が起こるのか。
この度刊行する『ピース・ナウ 沖縄戦』では、その捏造の要因として、「住民を守る」ためではなく、「国家を守る」ためという権力からの要請があることが見えてきます。具体的には、国民保護法のもと水面下で着々と進められている現代版「総動員体制」や沖縄を拠点とした「軍事強化」などです。
本書は3.11を契機に有事への協力要請がますます高まるなか、それに抗うとともに平和創造へのメッセージを沖縄から発信していくために企画されました。本書の編者の石原昌家先生より、本書の紹介を兼ねて特に若い人たちへ向けたメッセージをいただきました。戦争に荷担することのない無戦世界を自ら選びとっていくためにぜひお薦めしたい1冊です。

(小西) 

執筆者を代表して、本書を編んだ理由について、特に若い世代へお伝えします。私は1970年から、地獄そのものの戦場から奇跡の連続で生き延びてきた人たちの体験を聴きだしてきました。思い出したくもない、ましてや語りたくもない、さらに周囲が語らさないような、悲惨で悲痛な体験の数々でした。戦争を知らない子や孫にそのような体験を味あわせたくないならば、話してください、さもないと、戦争の残忍、残酷さが分からないと説得してきました。つまり、次世代の人たちに2度と戦争を起こさせないために、と、重い口を開いていただきました。
しかしながら、そのような体験を文字として、あるいは映像、演劇などを媒体にして、じつに多くの人たちが伝えてきたにもかかわらず、軍事依存勢力による戦争準備の土石流のような流れを押しとどめるには至っておりません。
それはどうしてなのか?という問いに答え、では、どうしたら良いのだろうかというひとつの方向性をめざすために、私たち4名の執筆者は、全力をあげて考え抜きました。
戦争の悲惨さをいくら伝え、あらゆる戦争を否定する心を育もうとしても、巨大な力が立ちはだかっています。軍事・軍需産業、職業軍人、兵器商人、戦争ありきの軍事評論家、軍事研究所などに加え、一部マスメディアまでもが、戦争を前提として、住民・市民を国防意識・軍民一体意識の形成に全精力を注いでいます。私たちは、戦争体験の記録を集積していくだけでなく、軍事依存勢力が、いかなる具体的動き、策略を用いて、全住民を、戦争準備へ駆り立てて行こうとしているのかを、知り尽くさないと、対処する術が見つかりません。いまや、自民党の石破・前防衛長官が、沖縄に沖縄人による「郷土部隊」の創設を堂々と説いています。また、民主党・枝野前官房長官は、沖縄の尖閣諸島に他国が上陸したら「自衛権を行使して、排除する」と、武力行使宣言をしています。沖縄戦同様に戦場動員、沖縄の戦場化を民主党、自民党の若手が口にしだした今日、とくに若い世代の皆さんは、安穏としておれません。
このような流れを押し止めきれなかったという自己反省を込めながら、私たちは遅まきながらこの流れの源流をたどり、その流れの行く先は、理想とする無防備・無戦の世界をめざす方向へ向きを変えるよう、指し示そうとしました。
本書が多くの若い人に、現実を直視し、強大な平和への原動力になることを心から願っています。

ピース・ナウ 沖縄戦

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