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コラム

更新日:2010.12.22

『講座 人権論の再定位』全5巻の刊行にいたるまで

当社の創設60周年を記念した企画のひとつとして、ここに『講座 人権論の再定位』全5巻を上梓いたします。
法律文化社で人権というと、1970年代に刊行開始した『現代の人権双書』を思い起こされるかたも少なくないと思いますが、あれから40年近く経って、人権は確実に社会のなかに定着したと言えるでしょうか。問題点はなかったのかどうか、検証してみることが必要になってきたのではないでしょうか。
本講座は、もともと、記念企画の皮切りとなった『対論 憲法を/憲法からラディカルに考える』がその基礎となっています。この企画で知り合いました井上達夫先生にお願いして、当方の構想をご相談したのが、2007年の秋のことでした。
井上先生には、この講座の構想にご賛同いただき、1回の打合せで、ほぼ企画の骨格ができあがりました。
編者(編集委員)の人選についても、当方からの提案を全面的に受け入れていただき、大変助かりました。
それから、編者(編集委員)や執筆陣による会議を重ねて、5巻全体の構想や各巻の役割を議論いたしました。議論の詳細は省きますが、「人権」について、根源的にかつ様々な観点から検討をし、構成や執筆陣を固めました。「人権」について考えることは、思っていた以上に難しいこともわかりました。といいますのも、「人権」の名のもとに行われる暴力が、世界的に問題になっているからです。また、「人権」という規範は、一種のフィクションであって、たえず批判的に捉えなければならないこともわかりました。
また、「人権」というと、憲法学を念頭において、国家と私人の関係を中心におく発想がまだ強いなかで、あえて憲法学を超え、国家と私人の関係だけでなく、私人と私人の関係や国際的な問題も扱い、ひろく人文社会諸科学をカバーした構成を考えました。
先行きの見透しや指針が持てない一方で、格差の拡がる現代社会において、本講座で展開している「人権」を核とした思考は、必ずや多くの市民に将来の展望を持ってもらえることと確信しています。
いま、マイケル・サンデルの具体的な事例からみた正義論が評判になっていますが、本講座も多くの事例の考察や社会実践活動を紹介し、そこから考える視座を提供しています。
本講座が、多くの読者に読まれることを期待します。

(秋山) 

講座 人権論の再定位

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