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原発は必要か? 明日のエネルギーを考える
このたびの東日本大震災により、被災にあわれた方々に謹んでお見舞いを申し上げます。また、皆様の安全と一日も早い復興をお祈り申し上げます。
2011年3月11日、突如として起こった東日本大震災により、私たちを取り巻く生活の状況は一変してしまいました。原発の放射能漏れ事故や計画停電など、被災を免れた私たちにもその影響は大きく、今改めて日本のエネルギー問題に無関心ではいられません。私たちが抱えるこの問題にどう向き合い、どう解決していくのか、その糸口になればと思い、『低炭素社会への道程』と『低炭素社会への選択』の2冊を紹介させていただきます。
思えば、2010年は省エネ家電に付加されるエコポイントや、エコカー補助金など、何かと「エコ」が取り上げられました。「エコ」は徐々に生活の一部となり、グリーンウォールやクールビズファッションなど、将来に向けて必要なこととして楽しく前向きに取り組んでいくものだと認識されるようになりました。しかし、今まさに「危機感」を持ってエネルギー問題に直面する局面になり、その認識の甘さを痛感することになります。いったい誰が明日自分たちの使う電気がなくなるかもしれないという思いのもと、エコに取り組んできたというのでしょうか。
震災後の私たちはエネルギー問題についてたくさんの議論をしていく必要がありますが、そのなかでも大きな論点として、原子力発電の是非については、どうしてもはずすことのできない重要な問題だと考えます。
日本はこれまで原発については推進する立場をとってきました。CO2を排出せず、安定的にエネルギーを生み出し、コストがかからないと言われている原子力発電は地球温暖化対策計画の一つとして、2030年以後も総発電量の30〜40%またはそれ以上を原子力発電でまかなうとされています。震災後、新規の建設計画は凍結・延期されるとのことですが、今なお原子力発電に頼らざるをえない現状があります。クリーンエネルギーとしての原子力発電は、確かに有益なのかもしれません。しかし、何か問題が起こった際の脆弱性については今回の震災で明るみになりました。
『低炭素社会への選択』では原子力発電の是非と再生可能エネルギーの可能性について、そして『低炭素社会への道程』では、環境先進国と評されるドイツがどのようにエネルギー転換に成功したか、その道筋をたどりつつ、2010年11月から12月にかけて開催されたCOP16にも触れています。日本はこれまでエネルギー問題に関しては個人の努力に任せるスタンスを取ってきました。太陽光発電や省エネ家電に始まり、今行われている節電の動きもそうです。もちろん一人ひとりの努力が大きな結果を生み出すことは間違いありません。しかし、個人レベルでの活動をさらに効果的にするためにもこれからは国家レベルでの思い切ったエネルギー政策が必要になってくるのではないでしょうか。また、高コストであるといわれている太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーに関しても、ドイツでは新たなビジネスチャンスとして積極的に技術開発がなされています。
いずれの書も地球温暖化に歯止めをかけるべく環境問題をテーマに書かれていますが、安全で安定的なエネルギーをどのように得ていけばよいのか、震災後の日本が今までと同じく原発を推進していくのか、それ以外の道はないのか、大きな一石を投じる書に違いありません。
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