- TOP
- > コラム
沖縄が問い続けていること
また沖縄で在米海兵隊員による暴行事件(女子中学生への強姦容疑)が起きました。痛ましいこの事件は、「基地」と背中合わせに人々が暮らしている沖縄の「いま」の一局面です。日本のわずか0.6%の面積しかない沖縄に、約75%もの米軍施設が集中し、約2万3000人の米兵(全体の約7割)が駐留しています。県内で、毎年、平均40件ほどの米兵による犯罪が起きているそうです。事件のたびに米軍当局は再発防止に努めると口にしてきたのですが効果はあがっていません。
基地があることによる危険は、米兵による犯罪だけではありません。2004年の沖縄国際大学への米軍訓練機墜落事故を思い出すまでもなく、日々米軍機が飛び回る沖縄は常に危険と隣り合わせにあります。
今回の事件を機にあらためて沖縄の「いま」に目を向けてみましょう。さらには、沖縄の歩んできた「沖縄戦」・「占領」・「復帰」のなかで一貫して「戦争」との対峙を迫られてきた歴史にも目を向けてみましょう。
ここで、沖縄と向き合うための2冊を紹介します。
水島朝穂/仲地博編著『オキナワと憲法』(1998年刊)は、95年の米海兵隊員の少女暴行事件を機に盛り上がった反基地への機運のもとで刊行しました。平和、人権、自治という憲法理念から沖縄を照射することによって、沖縄が直面している課題を浮き彫りにしました。それは、一方で沖縄から日本国憲法を問う作業でもありました。
もう1冊、石原昌家/仲地博/ダグラス・ラミス編『沖縄を平和学をする』(2004年刊)は、ちょうど沖縄国際大学への米軍訓練機墜落事故後に、「基地負担の軽減」や「脱基地」への大きな声があがっている中で刊行しました。あらためて基地化60年の沖縄の歴史と現在を平和学の視座から考察するとともに、今後の展望を提示しています。また、この書は、今春使用予定の高校日本史の教科書検定で再修正がなされることとなった、「集団自決(強制集団死)」にかかわる沖縄戦の真実についても詳述しています。
ところで、沖縄をはじめとして多くの自治体がいま「米軍再編」の影響を受けています。先日おこなわれた岩国市長選は、まさに米軍(米艦載機移駐)受け入れの是非を問う選挙となりました。結果は、僅か1700票差で基地移転容認派が推す福田氏が当選しました。基地の町を真っ二つに割ったこの選挙は、沖縄が幾度となく苦渋の選択をしてきたことと重なります。国と地方の関係、自治のあり方などについても、沖縄から多くの示唆や教訓が学べると思います。
沖縄は多くのことを私たちに問いかけています。その問いに真摯に向き合うためにこの2冊のご一読をおすすめします。
<前のコラム | 次のコラム> | バックナンバー